島ができて4800万年 人が住み始めて100年余り 続く音と消えた音 そして、聴く人
南大東島。
沖縄本島から東へ360km離れた絶海の孤島。4800万年かけて海底2,000mから珊瑚礁が隆起を繰り返して海面に現れた。ずっと無人島だったところを西暦1900年、八丈島の人々が開拓した。よって文化は八丈と沖縄のちゃんぷるー。江戸相撲、大東太鼓、三線、エイサー、大東寿司など・・・八丈と沖縄の文化が混ざり合い大東独自の文化形成が進む。開拓当時から基幹産業はサトウキビの作糖。島一面に広がるサトウキビ畑の下には未だ手つかずの鍾乳洞や地底湖が広がる。そしてダイトウオオコウモリ、ダイトウコノハズク、ダイトウビロウなど・・・世界でたった一つの自然が息づいている。
そんな島で2016年、私達はフィールドワークを始めた。
そこで触れたのは島人の生き様や情熱。
自然に畏敬の念を抱きつつ、先人が切り拓いてきた歴史や文化に誇りをもちそれを守り継いでいこうとする島人の姿に強く心を揺さぶられた。
そして今、開拓後の島の様相や人々の思いを知る世代が少なくなってきているという。私達は古くより受け継ぎつつ、今、独自の深化をしている島の姿を記録したいと考えた。
ーあなたにとって島の大切な音は何ですか?
「台風前になったら波の音は内陸でもゴーーーーってきこえる」
「ポッポロ ポッポロって夜、お家に居て外から聞こえるコノハズクの声」
「ざわわわわわ・・・・さとうきびが伸びてきた頃の風の音」
「トタン屋根を打つ雨音 子守り歌のようでね」
「シュッシュッシュッシュッ ポってならして 50m向こうにレールがひかれて 汽車の音」
しばらく考えてから口にする、島人にとっての音。中には消えた音もあるが、それぞれに心に響く音がある。天気を予兆する音、季節の移ろいを感じさせる音、生業にまつわる音・・・一人一人が島の音をしっかりと聴いている。沖縄でも大和でもない南大東独特な音風景。
「音」を通して南大東島を伝えたい。
それまで国内各地で五感をつかい、耳を澄ますワークショップや音を模様にする『音絵』を描いてきた岩田茉莉江。
アジア各地で人間の耳には聞こえないような微細な音も含め、場所の持つ特徴的な響きを録音という形で捉えてきた柳沢英輔。
異なる音のアプローチをする2人が、独自の生態系と開拓後100数年の人々の歴史へと耳をすます。そこで聴き捉えたものとは・・・
『島の音の録音CD』『音絵冊子』で表現する。
うみなりとなり Uminari Tonari Soundscape of Minamidaito Island
内容:南大東島の音14曲入りCD・音絵冊子(A5横サイズ)・島の録音MAP
定価:¥2,400-(tax in)
試聴 | No. | 曲名 | 収録時間 | |
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再生・停止 |
1. | サトウキビが風に揺れる音 | Sugarcane swaying in the wind | 3:37 |
2. | 種切りとハーベスター | Cutting sugarcane seeds and harvester | 7:37 | |
再生・停止 |
3. | 見えない声 | Japanese bush warbler | 4:03 |
4. | 海鳴り | The sea is roaring | 5:12 | |
再生・停止 |
5. | 大東太鼓 | Daito drumming | 2:59 |
6. | ヤギ、草を食む | Goats eating grass | 1:36 | |
再生・停止 |
7. | 石をうつ、水はねる | Improvisation in the underground lake | 3:52 |
8. | みずのなかに | Underwater echo | 5:39 | |
再生・停止 |
9. | 神宮に夜がきて | A night of Daito shrine | 3:11 |
再生・停止 |
10. | おみこし | Running up the stairs carrying portable shrines | 2:41 |
11. | 甚句を唄い相撲をとる | Sumo Jinku and Sumo wrestling | 6:34 | |
再生・停止 |
12. | トタン屋根の雨音 | Rain falls on a tin roof | 7:52 |
13. | 船がくる | The ship coming into port | 6:13 | |
14. | 真夜中の生き物 | A midnight in black mangrove swamp | 3:12 |
ひとが表現することというのは、時に厄介で煩わしいものです。
そうしたものから離れて、ただ見通しの良い音の連なりに耳を傾けてみたい。そんな人にお勧めしたいのがこのCDです。このCDには、南大東島で収録された環境の音や人々の生活の音が収録されています。
パンフレットには、うつくしい絵や地図とともにレコーディング時の状況や島の文化の一言紹介が載っていて、それをきっかけに南大東島に関心を持ってもらえるような作りになっています。南大東島でのフィールドワークは、何回も、また長期に及んだことでしょう。
クレジットを読むと、苦労してやっと収録できた音も入っています。収録された島の人の話し声や生活の風物からは、八丈島からの移民がもたらした文化の混淆がほの見え、海の上で交わされた島文化の往来が感じられます。
島の人々がどのように音を聞き感じているか聞き書した記事も興味深いものです。もちろんそうした民俗学的な側面もあるのですが、音によって島を辿っていく観光案内としてもたのしいものです。
hofli/津田貴司(サウンドアーティスト)
ぼく自身は、音を名付けてカタログ的に切り取りマッピングするやり方には批判的なのですが、それでも、このCDは音自体のおおらかさが深い魅力を湛えており、マイク(聴取者)と音の関係はスタティックなままでは在りません。
タイトルや解説を見ずにただ音に耳を傾ける時、わたしたちの感覚は耳を離れてスピーカーの向こうまで彷徨い出し、名付けようのない風の匂いや季節の気配を察知し、聴くことだけが開示してみせる世界の相貌への、わくわくする想像を膨らませてくれるのです。
□ 制作・音絵 / Producer and Sound Drawing
音風景研究家、おとたまり主宰
奈良県出身・在住。2003年南大東島で音に魅かれ、島民と共に島の音をひろい、島まるごと館に音の展示物「南大東島音たまり」を制作。島のサウンドスケープ研究を続け2007年大阪市立大学大学院文学研究科アジア都市文化学専攻前期博士課程修了。五感で感じるようにその地域、場所を印象付けていく「音さんぽ」を実施。近年はフィールドワークを行い、音描きによる作品を制作している。
Soundscape Researcher and Facilitator. Born and living in Nara, Japan. In 2003 she was fascinated by the sounds of Minamidaito Island in Okinawa, collecting the sounds of the island with the islanders, creating a sound exhibit "Minamidaito Island Ototamari" at the Visitors Center of the island. She continued her research on the soundscape of there and completed her master course in 2007 at the Department of Asian Culture & Urbanism of the Graduate School of Literature & Human Sciences, Osaka City University. She often carries out "Sound Walk (Otosampo)" events and creates art works through undertaking field works and making sound drawings.
□ 制作・フィールドレコーディング / Producer and Field Recording
音文化研究者、フィールドレコーディスト
東京都出身・京都在住。2006年頃よりベトナム中部高原で山岳少数民族のゴングを中心とする音の文化を研究する。2010年京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了。2018年現在、同志社大学文化情報学部助教。様々な場所の音/振動を記録したフィールド録音作品や映像作品を海外のレーベル、映画祭などで発表している。
Eisuke Yanagisawa is an ethnographer, field recordist, and filmmaker. Since 2006, his main research focuses on the Gong Culture of ethnic minorities living in the Central Highlands of Vietnam. His field recording works were released in various labels as Gruenrekorder, Very Quiet Records, Sublime Frequencies, and his audiovisual works were screened/exhibited in various film festivals, museums around the world as Canada, India, Estonia, Taiwan, Italy, Germany, USA, Brasil, and others. He is currently an assistant professor at the Faculty of Culture and Information Science, Doshisha Univiersity.
以下店舗にてCDの販売を開始しました。店舗の詳細はWebサイトをご覧下さい。
2018年3月17日(土)19:00~21:00 「音と音のはなしをきく」講演会 と、ちょっとゆんたく。(南大東島多目的交流センター)にて販売しました。
他、随時更新予定
info〇uminaritonari.site
〇を@に変えてお送りください。